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夏支度 ― 暑さに備えるあれこれ

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真夏のような暑さの後に梅雨らしい雨が戻り、少しばかり夏仕事をする。ほどよい粒の紀州梅を買い、青っぽさが消えるまで2〜3日置いてから漬け始める。梅もずいぶん 値上がり したものだ。新米に梅干しのおにぎりが高級品になるとは思いもよらなかった。 ヘタを取った梅をさっと流して汚れを落とし、しばらく水に浸してアクをとる。これは熟しきった梅であれば省いてよいが、 まだ固いので一時間弱つけておく 。水に入れたばかりはうぶ毛が水をはじいて何とも不思議な色合いになる。 頃合いを見て漬け始める。好みの塩気にできるのが手作りの良いところ。 塩 12% と 砂糖 3〜4% を混ぜ込む。 使うのは例のビニール袋。1kgちょっとの梅を塩、砂糖と一緒にまんべんなく漬け込む。時折左右に振りながら水が上がりやすいようにしてやる。一日もするとこんな感じに ひたひた と漬かってくるので冷蔵室に入れ、良い紫蘇が出てきたら加えてやる。あとはこのまま 梅漬け にしてもよいし、夏空に梅を干して 梅干し にしてもよい。干した方が酸味が増すが、梅漬けもなかなか悪くない。 夏の暑さでも、酸っぱい梅は食欲を回復してくれる。梅干しに限らず日常に取り入れると、不足する栄養や吸収しきれない栄養をとる手助けになる食べ物は数多い。自分で試しながら、現在好んで利用している 補助食品 をあげてみよう。効果のほどは個人差があるものの、比較的多くの人におすすめできると思う。 まずははちみつ。これも自然の美味しさと栄養を兼ね備えた食品。あまり安価なのもは混ぜものが入っているのかなーと戸惑いながら探しながら目にとまったのが ツルヤオリジナルはちみつ 。 ツルヤはもとは小諸が拠点のスーパーで、同じく店舗がある軽井沢の農園と契約してはちみつ提供しているそうだ。実際に良い香りがするから100%のように見える。オリジナルにこだわらなければ海外産も手頃なものが揃う。 次は、明治 メイバランス 。これは病院で毎食のように出た栄養補助食品。さまざまな味の種類があり好みを選ぶのが大変だが、病院などで毎日飲むのであればいろいろあった方が楽しいかも。 実際飲むといかにも補助食品という味で、好みが分かれると思う。一つ飲むとかなりお腹の足しになるのでおやつにちょうど良いし、栄養ドリンクを飲むよりは良いか。無難に「ヨーグル...

もうすぐ田植え ― どうなる米価格

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ずいぶん間が空いてしまった。今年も間もなく田植えの季節。その田植えもタダでできるわけではない。5月になるとこのような 納付書 が送られてくる。 お値段はご覧のとおり。ちょうどオーナーになった頃の伝票が見つかったので比べてみる。15年で 5,000 円ほどの 値上がり 。昨年からの米価格の急騰よりも以前からこの値段になっていたので、米価格というよりもそれ以前の材料費などの上昇が影響していたのだろう。 苗を育てるのに使う種籾は、オーナー田ほどの広さ(苗床5〜6枚)であれば 5,000 円もしないところで、それ以外に田植え以降に使う資材のメンテナンスも必要であるし、諸々の費用が含まるものと考えられる。 昨今の米事情 一昨年からの猛暑による米不足を受けて一気に倍近くも上がった米価格であるが、これを上記の費用と比べてみる。平均的な棚田で穫れる米は脱穀して 60〜70kg、これを精米すると 2 割ほど減るので、手元に残るのはおよそ 50kg になる。すると 5kg あたりおよそ 3,900 円 で、現在の高騰した市販価格と同等になる。 もっとも、生産物と経費を比べるのは意味がないわけで、それでも田植えや収穫を一つの趣味と考えれば、自分で育てる棚田米もそう高くはないと言える(かな)。市販米が高いとは言え、2000 年代には今くらいの値段だったのだから安さに慣れてしまったとも見ることができる。 現在の食料自給率 図 1. 都道府県別食料自給率(カロリーベース) 平成 29 年度までの 5 年間平均  そんなことを考えつつ、日本の食料自給率について気になったので調べてみた。食料自給率は カロリーベース と 生産額ベース で算出される。結果は図のとおり。 ほか農林水産省による 令和2年度の日本の自給率 はカロリーベースで37%、生産額ベースで 67%となる。長野県(令和元年度)は前者が 53%、後者は 134%。カロリーベースに比べ生産額ベースが高く、野菜や果物など付加価値の高い生産物の影響であろう。 また、他国と比べても図抜けて低い食料自給率の日本において、将来的にさらに困難な状況を迎えると予想される。私たちが自分で米を作るには土地や機械が必要になるが、簡単に作れる野菜なら少しでも足しになるか。せめて、国内と地元の農産物を好んで選ぶようにしたいとこ...

秋晴れの日を病院で過ごす

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11月になって 入院 をするはめになった。季節は秋から冬へ、外は気持ちのよい青空が広がっているはずが、毎日見るのは灰色の世界。それでも週末をはさんで6日ほどで退院できたのは幸い。 いきさつ 例年私は夏の終わりに定期検診を受ける。実は昨年、 貧血 らしき症状が出て、検診も案の定こんな結果に(左が今年、右が昨年)。ヘモグロビンなど基準下限値のおよそ10%減で軽めの貧血とはいえ、かかりつけの先生からはさらなる検査を勧められた。男性の貧血は女性と異なり 重大な疾患が隠れている 場合があるらしい。 紹介してもらった篠ノ井の病院でひととおり検査を済ませ、担当医曰く「 多少改善しているし、原因不明だけどこれでお終い 」だそう。 は ...ぃ? 検査値を見ても誤差くらいしか変わらず、原因を知りたくて来たのに何ともまあ。幸い胃腸からの出血はなさそうなので大事にならず一安心はしたものの、どうしていいやら。また、血清鉄は標準範囲にあり、鉄を摂取して良くなるものでもないようだ。そんなこんなで一年がたった。 入院から退院まで 今年の猛暑は昨年よりは過ごしやすく、体調を崩さず夏を過ごして検診を受けた。ところが結果は変わらず。さらには、食が進む季節になっても食が細く、食べられない日が何日が続いて体が動かなくってしまった。見かねた姉が市内の病院に入院の手続きをしてくれ(姉よ感謝)、病院いらずだった私にとって初めての入院。不安の中、点滴をつなぎ検査をして静養する毎日は、息苦しさはあるものの、何をしなくてもいい生活だ。 病院食はこのとおり、最初は 介護食 。ご飯もミキサー食で、初日は食欲もなく一口二口食べるだけ。ようやく落ち着くと完食できたがお昼だけパンにしてもらった。パサパサの食パンと牛乳がごちそう。 最後の2日ほどはようやく固形になっり、やはり形があると美味しさを感じる。一食500円にしては物足りないが、物価高で少ない人手で作る食事に文句を言ったらバチが当たるな。 この頃になると点滴も外し、だいぶ体力も回復してきた。数歩歩いてゼイゼイ言っていたのと大違い。介護食だけで満腹になったのとはすっかり変わり、食事だけではやや物足りずに売店で買った煎餅をボリボリ食べた。 こうして予定より早めながら、担当医に認めてもらい退院となった。めでたしめでたし。最後のした検査...

はたして今年の出来は?

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先週末の脱穀をもって本年度の日程はすべて終了。毎年同じようなことを繰り返していても、かかる苦労も異なれば、手にする成果にも違いが出るのが自然相手の仕事である。 取っても取っても草が増え 一番の悩みは、夏場に伸びる草だ。雨が降っては照り返し、すぐに雑草が伸びてしまう。草刈りのし方が悪いのかなとも思ったが、名月会の方々も同じことを口にしていたので、あながち自分のところだけでもなさそう。さらに、せっかくよく育っていた シロツメクサ などが すっかり刈り取られ てからはなかなか元に戻らず、いらない草が勢いを増していく。後半には有益な草が伸びてきたので、来年はいくらか期待できそうか。 さらには、9月になっても高温が続き、田んぼの中の草も伸びてきてしまった。例年この時期は、ポツポツと出てきたヒエを取るくらいで、今年はヒエは少なかったものの、足元で ホタルイ などの草が増えてきた。田植えの後にこれらの草の除草剤を使えばかなり抑えることはできるので、そろそろ除草剤を使う必要が出てきたかもしれない。 雨にやきもきする 気まぐれなお天気の9月から10月になってもすっきりしない空。豪雨というほどではなくても田には水たまり。稲刈りの後に数日しとしと雨だけでもこのとおり。周囲には同じように 水びたしの田もあれば、乾きの早い田も あり頭を傾げる。田植えでもかなりきめ細かな土で苗を植えるのに手間取ったから、 代かきのやり過ぎ が原因かもしれない。 稲刈りの後の雨は長時間降り、予報ではさらに降りそうだったから、こういうときは シート をかけておくのと安心。脱穀までに数日好天だったは幸いで、シートのおかげで稲も湿らずきれいな藁がとれた。オーナー田くらいの量ならあまり大きなシートは必要なく、3x2m程度で2枚あればいいし、片付けも楽にできる。 肝心の出来はというと、今年の収量は少なめ。味はこれからのお楽しみ。昨年と違い、お盆の後に少しだけ涼しくなったのと、収穫までにお湿りがあったので、去年よりはいいだろうと期待をしている。収量については、例年 65kg くらいでほどほど、 70kg 以上であれば上出来、 60kg まで落ち込むとあまりよくない。 どうやら苗の出来が今ひとつで、ポットに8〜10もぎゅうぎゅうになっているものや、1〜2つだけのものもあり、植えるのに苦労し...

グーグル検索に悩む

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ようやく過ごしやすい季節となり、稲刈りまでひと月ほど。今回は、このブログサイトの内幕をご紹介しよう。 このブログは Blogger というグーグルのサービスを使って作成されている。もっと多機能なブログサービスも存在するが、あまり手間をかけずシンプルに使えるのが Blogger の特長である。もっとも、シンプルすぎてテンプレートも「帯に短し」といったもので、本サイトは一覧画面などを見やすいように多少調整をしている。 ようやく作ったウェブサイトで気になるのが 検索結果 だ。クリック数が収益に影響する商用サイトは検索パフォーマンスが重要なことはもちろん、個人サイトでもいくらかは気になるもの。なお、サイトはグーグルだけに登録され、この程度の個人サイトであればグーグル検索からしかヒットしない。グーグルのサービスであるから特に有利になるということもない。 Google コアアップデート さて、ウェブサイトの検索順位は 検索アルゴリズム により決まる。このアルゴリズムは定期的に更新され、この更新は コアアップデート と呼ばれている。 大海原の小舟にも足らないこのサイトも、年に2〜3度のアップデートの影響が少なからずあった。立ち上げ当初に想定した検索キーワードの一つに『 姨捨棚田の四季 』があり、一時は思惑どおりに上位に掲載されたもののアップデートを受けてまったく見つからなくなってしまった。ならば『 姨捨棚田の記 』ではどうかというと、浮いては沈むの繰り返し。 「 どうなってるの? 」 と悩むことしきり。しかも、ブログタイトルがなかなか拾われず、プロファイルページが表示されてしまう(下図)。普通『姨捨棚田』で検索する人はいても『〜の記』を見る人はまずいないだろうから、どうでもいい話なのだがすっきりしない。その後、8月になるとようやくホームページのリンクが最上位に現れた。 ちなみに、目的のウェブサイトが検索結果に表示されないときは、 詳細検索 を使うと見つかる場合がある。検索画面の「すべて 画像 動画 …」とある行の末尾にある「ツール」をクリックすると詳細検索が現れる。これと同等の検索は検索ボックスからも行え、引用符(" ")を使った 完全一致検索 などは簡単で便利な検索方法だ。 このように引用符で検索語句を囲んで検索すると、...

今年も草刈りで汗をかく

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8月に入ると棚田の稲も穂が出だし、やがて一面新しい穂で埋めつくされた。7月に雨が続いて心配されたが、小ぶりな稲にしっかり穂がついた。今年は雨が降ってはカンカン照りの繰り返しで、稲はともかく、雑草にはこの上ない天候だ。わずかの間にぐんぐん伸びるものだから大変。穂が出揃う前に草刈りを一段落させると、いつもより大きな草の山になった。 この時期の草刈りは実に厳しい。朝早くには顔真正面から朝日が差し込み、時間とともに日差しが強くなる。ひと仕事終える頃には頭の上からジリジリと照りつける。近年は夜間の気温が下がらず、ほぼ 熱帯夜 の日が続くようになり、そんな翌朝は体を動かすのが辛いものだ。 8月になっても厳しい暑さが続いた昨年などは、こんな風になることも多かったのだが(イラストはすべて©いらすとや)、今年はいくぶん過ごしやすい。水分補給も 糖分の多いものよりも麦茶などを主にして塩分を補う と体が動かしやすいようだ。それにしても、ここ田舎でも都市化が進んで年々暑さを増し、快適な生活とひきかえにやがて大都市と変わらぬ暑さになりそうだ。 そんな暑さの中でも 名月会 の皆さんは変わらず元気に草刈りをしている。オーナー田で「保全」とされる田やその他の箇所の草刈りはすべておじさんたちがしてくれるのだ。たまに一緒になることがあり、先日も挨拶をしたらお茶をいただく機会があった。熱々のお茶をすすりながら、例の 高刈り の件を提案してみた。 (私)「草を残さず刈り取るよりも、全体に芝が多いので、数cm残して刈ってはどうでしょうか。繰り返すと次第に 芝やシロツメクサ が増え、イネ科の草を抑えられると思います」 すると何と、既に実践している方が! 「うん、うちもやっているよ。確かに芝が増えてくるからいいよね。」 少数であっても高刈りをする人がいて、それが話題になってくれるだけでも大きな変化。慣れた方法を変えるのは難しいからすぐにとはいかなくても、少しずつ仲間を増やすのが大事な一歩だ。 田んぼに戻り草刈りを続ける。畦の草も2週ほでこのくらい伸びる。 昨年丸坊主になってしまった から、なかなか元に戻らない。雑草の勢いに押されて芝が隠れてしまっている。 際の雑草がひどく伸びたので、シロツメクサをよけながら鎌で刈っていく。草の伸びを抑えるため、刈ったところを鋤くように切り...

梅雨のひと仕事 ― あんずのシロップ漬け

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梅雨のさなか、森の あんず が収穫を迎えた。今年もあの甘酸っぱい味にひかれ、手に入れようと出かけたが、あまり出来がよくなかったらしい。安定しない気候は作物には厳しいようで、粒が揃わず、お目当ての「 昭和 」は品薄、やむを得ず「 信月 」という品種を使うことにした。見た目は淡い色で、2つに割るとあんずらしい橙色。加工用に適しているとのことで、何とかなるか。 ちなみにこのあんずは あんずの里物産館 で入手したもの。以前は地元の農家から直接いただいていたが、栽培を止めてしまい仕方ない。それでも、早めの時期に朝早いうちに行くと良いものが並んでいる。 あんずシロップ漬け (材料)あんず2kg / 砂糖 700g / レモン果汁少々 1.あんずを1時間ほど水につけ、汚れとアクをとる 2.実の筋に沿って割る(切目を入れてひねると楽) 3.鍋に実を並べ、砂糖をまぶす(ここではビニール袋を使う。レモン大さじ2〜3、保存料代わり) 4.一晩した浸けた実とシロップを保存瓶に入れる。 5.脱気をして、しっかりフタを閉める シロップ漬けというと、あんずを煮詰めてシロップを注ぐ方法があるが、ここでは砂糖漬けにしてシロップを作る。硬い実が一晩で柔らかくなり、果汁がしみ出たシロップができる。実の切り口を上に向けて砂糖を盛るようにふりかけ、袋を閉じて朝まで置く。鍋であればホーロー鍋がよいだろう。熟して柔らかい実は崩れてしまうので、ジャムなどに使う。 実際、今回は果皮にツブツブの目立つ実が多く、食べて大丈夫でも見た目が悪いので半分ジャムにした。漬けたあんずとシロップ、水少々を鍋に入れ、1時間も煮込むとすっかり実が崩れてくる。あんずの糖度が 10% くらいだから、砂糖と合わせるとせいぜい 45% の低糖度。この信月は酸味も控えめのようで、ほどよい味になるだろう。 さて、シロップにたっぷり浸ったあんずを 瓶詰め する。この量なら中サイズ(450ml)の保存瓶で6つできるが、半分ジャムにするからシロップ漬けは3本。煮沸消毒して熱がとれたらあんずを入れる。実のサイズにもよるが1瓶に 12〜14 個ほど、少し余裕をもたせる。瓶の中で浮いていても落ち着くと沈んでくる。シロップは溶け切らない砂糖と一緒に入れる。 続いて 脱気 。湯を煮...

お一人さまの田植え

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今年もまた田植えを迎えた。毎年同じような出来事でも、年ごとに違うことはよくあることだ。今年は、これまで頼りにしていたお手伝いの都合が悪く、一人で田植えをすることとなった。さらに本人も当日土曜日の都合が悪く、翌日にしようと予定していたところ、日曜は一日雨。そこで土曜の夕方と、あとは月曜に分けて何とか終えることにしたわけだ。 独り田植えをする 朝のうちは大勢で賑わう棚田も、昼を過ぎると残るのは片付けをする人だけ。それも姿を消すと、いつもどおりの静かな棚田に戻る。さしずめ 居残り 田植えといったところか。さて、一人で全部できるかな? これまでにも、ほぼ一人で植えたこともあったから、出来ないことはなかろうが、冬の間にすっかりだらけていたからつらいなぁ。 ところで昨年、 少人数で手早く進める 方法を取り上げてみたが、実はあれ、田植え機を操作するときと同じ動作なのだ。今回どうも足を抜くときに苗がずれやすいようで、粘り気のある土ではあるのだが、地面がかなり柔らかくなっているように思えた。そこで、同じ要領で 下がりながら植える ことにした。苗を植えるラインを踏まないように下がっていくわけだ。 単調な作業は動作に無駄があると効率が落ちるもの。これまでは取り分けてもらった苗をすぐ植えることができたのだが、それも自分でしなければならない。少し植えては苗を取り、また戻って再開と、余計に手数がかかる。 うちの田は、一部が道路側からよく見えるので、そこを見た目よくしようと、いらぬ見栄を張ってしまう。でも、 曲がっているところは直したい よねと、余計な手間をかける。全然進まないのに早くも日が落ちてきた。ハァ、疲れた、今日はここまで。 翌々日の田んぼ。いくらか濁りがとれて、透明な水面に空が映り込んでいる。気持ちよい風に吹かれながら、仕事を始める。昔はこれを一週間も毎日続けていたのだから恐れ入る。家族・親戚総出の大仕事。やはり田植えは賑やかな方がいい。 今年の夏はどんなだろう、うまく稲が育つかな、などと考えながら手を動かす。今年の苗は出来が今ひとつのようだ。安定しない5月の天候が影響したのだろう。でも、ポットの中に種が全然入っていないものや、ギュウギュウに詰まっているのもあったから、機械の調子も悪かったのかもしれない。 かの 下の田 では、これを毎年100枚くらい用意し...

結び

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今日は彼岸の中日。日本ではとうに始まっている春も、西洋では春分を春の始まりと言うのは文化の違いだが、春は桜であることに違いはないようだ。ここ長野でもあと2週間もすれば桜が咲き始めるだろう。 最近は暖かい冬も多く、そんな年はこのあたりでも3月末に満開になることがある。雪が多く寒い冬だと満開は4月上旬にずれ込み、この写真は4月半ばすぎに撮ったもの。開花が遅いほど咲きっぷりがよいのだろうか、あまりにきれいなものだから、近所の人と花見をしたのを覚えている。ちょうど棚田オーナーを始めた年だった。 棚田も春を迎え この時期の棚田は、これはこれでよいものだ。草木はまだ眠ったまま、訪れる人も数少ない。それでも、優しい陽射しと穏やかに吹く風はどの季節よりも心地よく、何もない中を歩いているだけでも楽しい時間を過ごせる。 誰もいない棚田で、たまに歩いている人を見かけることがある。袋らしきものを手にして、うろうろと下を見ながら歩いている。芽が出始めた山菜を探しているようす。しかし、「フキノトウ」すらオーナー田のあたりにはほとんど見られない。あるとすれば、フキを刈らずにおいた田んぼ。このために私はフキを残しておくのだ。 来月の中旬になると、新しく応募したオーナーが現地説明会に集まる。これから米作りを始める田んぼを見て、それをカメラに収めるはず。そして目にするのが、この風景。遠くに見えるのは飯綱山、小さく見えるのは雪をかぶった戸隠山。5月の連休まではまだ雪が残り、すっかり雪が消えるといよいよ田植えの時期だ。 田植えの準備が始まり、棚田に水が張られ、またにぎやかな田植えを迎える。棚田を訪れるたびに、いつも違う風景が眼の前に広がるだろう。半年ばかりの間に、一日一日と景色が変わり、あっと言う間に一年が過ぎ去る。 一年のご愛読に感謝 棚田オーナーを始めて、そのようすを記録に残したいと思いながら長い年月がたち、ようやくそれらしきものを書き記すことができた。写真は、特に棚田に来るようになって数年の間は、結構熱心に撮ったものがあり、それを残したいという気持ちもあった。何しろ十数年におよぶことだから、いろいろ思うことがあるもので、棚田をテーマに書くことには事欠かない。それ以上に、これまでに過ごした家族との出来事がたびたび思い起こされ、むしろそちらの方が大きなテーマであったかと思う。 ...

春の訪れと嬉しいお祭り

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長く続いた寒さもようやく和らぎ、春の訪れを感じるようになると、どこかしら明るく楽しい気持ちになる。そんな時期であるからこそ、 桃の節句 のお祝いは嬉しいお祭りなのだろう。 ところで、この古びた雛人形は、私の母が子供の頃に贈られたものである。まだ戦前で、辰野にいたというから、伊那の街まで行って手に入れたのか。今のに比べるとずいぶん簡素なお雛様であるが、物の少ない時代の子どもには華やかに見えたことだろう。戦中戦後とあちこち移り住みながら、嫁入り先に落ち着いた後はほとんど飾られずにしまわれていたものだ。 おばあちゃんの雛祭り その雛人形が何十年かぶりに飾られることになったのは、もう何年も前のこと。親しいご近所の皆さんと雛祭りをして、それぞれにお雛様を持ち寄ることになったのだ。最近は雛人形を飾らないことも多いようで、そんなお雛様を持ち寄って盛大に雛祭りをするところもあると聞き、それをまねてみたらしい。 場所はご近所の古いお屋敷で、お座敷にいくつもの雛人形が飾られた。こちらの右上がわが家のお雛様。 こちらは五段、七段と豪華な雛人形。これだけあると飾るだけでも大変だが、おばあちゃんたちが頑張って飾り付けた。失礼なようだが、齢をとると子供のようになるというように、皆さん子供のように喜んで楽しんでいたそうだ。 飾られたお雛様が披露されると、ご近所からも大勢見物に訪れて、にぎやかな雛祭りになったのはありがたいこと。 この雛祭りはその後何回か催されたが、次第に手芸愛好家の作品が中心となり、作者の方々には嬉しい場となったようだ。これほどのお雛様が飾られたのは一度限り、わが家のお雛様にとっても最後のにぎやかな場となり、いくつになっても楽しいお祭りであることに変わりはないと思った雛祭りである。 (来週はお休みいたします。その後はいよいよ本編最終回!)