里山の風景今昔

一面のひまわり畑。棚田の風景も一部リニューアル。

新しいひまわりのある風景

梅雨時に植えていたのは何かと思えば、これだったのか。目を引く花を見ながら上がってくると、坂道も苦でなくなる。耕作放棄された土地がよみがえったようで、新たな見どころの一つとなるか?

里山を彩る花々はこれに限らず、畦に生える草もきれいな花を咲かせてくれる。白い花のヒメジョオンなどは好んで残して楽しんでいる田んぼをよく見かけるし、小さな花のシロツメクサは残しておくと役に立つのはこちらでお話ししたとおり。以前はコスモスももっと咲いていた。

訪れる人はこれらの草花も一緒に風景をカメラにおさめているから、やはり里山には欠かせない存在なのだろう。ある時、ときどきやって来るという写真愛好家から、「ここに彼岸花がありませんでしたか」と尋ねられたことがある。確かに以前は道端にきれいに咲いていた彼岸花が姿を消してしまっていた。二人して残念なことと声を上げたものだった。

あえて残す ― 草刈りの植生の関係

先頃の草取りの件で目に止まった『長野県姨捨地区の棚田畦畔法面の草刈り管理による植生変化』という論文がある。今から20年以上前の棚田の植生調査についてまとめたもので、一般の注目を集めるものではなかろうが、当時の田のようすが伺えるようで興味深い。

農家を対象のアンケートもなされ、特定の植物を刈り残すことについてこう記してある。

目的とする植物種は,キキョウ,クサボケ,ゲンノショウコ,ドクダミ,ナデシコ科の植物(種名は不明),フキ,ヨモギなどで,食用の他に薬用や観賞用として利用するという。刈り残さないまでもそうした植物を利用するという農家は8戸* あった。 (*回答を得た農家11件中。これらを残すとしたのは2件)

十年一昔、ふた昔もすれば景観も多少変わったことだろう。今や周囲の地元の田も含め、所々に意図して残したらしい植物を目にはするが、多くはすっかり整備された畦畔だ。棚田をひと回りしてフキ一つさえなかなか見つからない。

カメラや景観のために草を刈っているのではないという声が聞こえてきそうだが、こればかりの広さのオーナー田だからこそ、豊かな植生を維持するのに最適な場所だと思うのだ。そう手間のかかることではなく、フキなど残しておけば、さらに楽しみを増やしてくれる。

残してはいけない植物もある

このひまわり畑の周囲は、今では耕作されずに草だらけになっている。アレチウリ(荒地瓜)の草刈りのようすが『棚田通信』(オーナーへのお便り)で伝えられているように、やっかいな植物が増えていて、長野県では駆除強化月間を設けているほどだ。


この草地にはあまり奥まで踏み込まないのだが、通路に近いところに生えているのはどうも クズ(葛)が多いようだ。葛粉や葛根湯にも使われる植物で、特定外来生物とされるアレチウリに対してこちらは在来種である。

特徴として葉っぱが3つに分かれ、色はこちらの方が濃い緑色をしている。困り者だが紫のきれいな花を咲かす。一方のアレチウリは茎から出る葉が1つだけで、もう少し黄緑っぽい色だ。

どちらにしろ根を張られるとやっかいで、今のところ放棄地のあたりでとどまっているようでも、たまにオーナー田の斜面にぽつりと生えだしたクズを見かけることがある。茎が硬く、根をしっかり張られると面倒なことで、もしも自分のところに見つけたら一切残さず片付けてしまってほしい。


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