梅雨の晴れ間の棚田は…
田の草取りにちょうどよい。
収穫までに 3回の一斉除草 が予定されているが、実際のところ、特に除草剤を使わない田は稲に混じって生える田の草に早めに手を打つ必要がある。ひとたび勢いを増すと手に負えなくなるので、手作業だけでは難しいようであれば初期の除草剤散布を利用する選択もできる。その他、田んぼの水もオーナーの知らぬうちに管理をしてもらえる。ともかくオーナーは草を取ればよい。
私は草取りもあるが、見晴らしのよい景色、新鮮な空気、日々変化する田のようすを楽しみに、一週と空けずに山に出向いている。いわば地の利というわけだ。
田植えを終えてから5日もすれば苗が根づき、田の中を歩き回っても浮いてしまうことはない。まっすぐに植えた苗の合間にポツポツと生える雑草を目当てに歩きまわる。何しろ、お天気次第では畝の間が あっという間に雑草だらけ になることもある。
田植えから3週ほどたち、だいぶ緑が増えてきた。
畝の向きを思案したところで緑一面になればそう違いはないが、長手だと草取りもしやすい。まだよく見える水面を見回しては、苗の合間に田の草を見つける。
まっすぐな列から外れた草はすべて雑草。後々の手間を減らすために、ひとふんばりする。
まず目につくのがヒエ
稲によく似たヒエ(→)はイネ科の雑草で、一緒に伸びてくると見落としがち。後になって株の半分がヒエだった、なんてこともある。
よく知られる見分け方として、稲には葉耳という輪っかになった毛のようなもの(○の箇所)があるが、ヒエにはない。ともかく列から外れたものはすべて抜いてしまう。
私のところは最初の年にひどく煩わされ、エライことを始めてしまったと不安になったものだ。盆の頃に少し間を置くと、その後でひときわ高く伸びたヒエに驚いた人もいるだろう。その年は残されていた種が多かったのだろうか、ついつい後手後手になったこともあり、取り除くのはとても手間がかかった。
ひとくくりに雑草といっても、それぞれに名のついた草である。毎年繰り返し草取りをしていると次第に覚えるもので、私の田ではヒエ以外にホタルイ、コナギが目立ち、セリなどもまばらに見られる。
その他にもおなじみの草が…
あちこちと伸びはじめたホタルイ。見づらいが、水中にはへばりつくようにコナギも生えてきた。
何しろ、このくらいのうちに始末すれば、大きくなった雑草を見なくてすむ。早いうちなら楽々引き抜けるし、土をかき混ぜていけば水中の小さな草は浮いて流れてしまう。
土の撹拌は稲の成長を促す効果があるという。その昔、祖父から 草なんざ足で埋めちまえばいいんだ と聞かされて、嫌気がさしたんだろうなと思っていたが、田んぼに埋め込むと肥料になるのは確からしい。
こうして早めにと心がけるほどに次第に数が減り、今ではまばらに見つけては引き抜くほどになった。田んぼに限らず、植物とは実に正直 である。邪魔者がなくなった稲も、のびのびと育っているように見える。
ときどき、田んぼというのはある種の 観覧会の場 のように思えることがある。人々はいつの間にか知らぬうちにあちこちの田を見てまわり、あそこはよく手が入っている、ここはえらく草が生えたな、などと言っているのだ。うまい田植えのやり方はないものかと考えてみたり、誰に見られるわけでもなく草取りにいそしむのは、おそらくそのせいだろう。
田の草だけでなく、畦草も勢いよく伸びてくる。こちらも手のかかる仕事である。(続く)
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