稲に花が咲く ― お米の花を見る

暑さが収まらないうちに秋が来るのが日本の暦である。それでも夕立でも降ればだいぶしのぎやすく、日中も棚田に行くとほんの少し秋らしさが感じられる。

穂が出始めた棚田

8月に入り田を見回すと 出始めた穂 が目につくようになる。

今年はこれまでの暑さもあり、例年より穂の出が早いようだ。あちこちの穂が出てきて1週間もあけずに行ってみるとすっかり穂が出揃うこの時期(穂揃期)は田んぼに行くのがとりわけ楽しい。

出穂のようす

稲の花はどんな花

田植えの時期にもよるが、稲は8月初旬から下旬にかけて穂を出す。田植えから60日程度かかる。

まず成長した稲の茎から穂が押し出るように 出穂 する。先の方から花が咲き始め、おしべが出てくる。午前中の1時間ほどで 受粉 を終えると花は閉じる。下の写真もよくよく見るとわずかに開いている花があるが、残念ながらほとんど閉じた後である。

受粉をした稲



8月に入ると大気が不安定になりがちで、突然の雷雨に見舞われることがある。雷のことを 稲光稲妻 とも呼ぶのは、大昔に雷に稲を実らす力があると信じられていたとする説がある。恐ろしいほどの雷鳴を聞くと、稲に特別な力を与えると思うのも分かるような気がする。

この時期でお米の味も決まる

8月下旬から一月ほどの登熟期(とうじゅくき)を経て収穫を迎える稲は、養分を蓄えた米粒が大きくなり、乾燥して硬くなる。その間は、好天で気温が高いことが好条件とされ、一方であまり温度が高いのも好ましくなく、最近は夜の気温もなかなか下がらず厳しい環境だ。昨年の8〜9月は雨が少なく乾燥し、水分の少ない米だった。

この時期の 温度が高すぎる と、米粒が割れる(胴割れ)だけでなく、味が落ちる原因にもなるといわれ、私の体験もそのとおり。田植えも収穫も一月近く遅い「下の田」で収穫した米と比べると、舌を頼るしかないが、「上の田」が今一つふるわないのは暑さが厳しい夏なのだ。条件が変わると、味の評価は変わってくる。

ひいき目にも手植えと手刈りの米が勝ってよいはずが、この結果はやはり暑さの影響とみてよいだろう。品種の違いもあるが(下の田は「風さやか」というさっぱりした味の品種)、こちらは9月にかけて穂が揃い、涼しくなって成熟するのでその点有利だ。稲にも人にも、あまりに厳しい暑さはありがたくないことで、思いどおりにならない天気に祈るほかない。

珍しく人のいる田んぼ。近寄って穂を見たくなる


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