棚田の草刈りと来訪者
水から上がってくつろぐ蛙。草刈りに来た人間は慣れっこなのか逃げもしない。せっかくだから蕗(ふき)は残して伸びた草を刈っていく。
棚田の草刈りは結構手間がかかる
平地の田んぼだと周囲の畦だけで済むところが、段地になっていると斜面がかなりの広さで、場所によっては3〜4メートルほどの高さの斜面を刈らなければならない。
私のところも一部に高めの急斜面があり、ガレ場のようなところもある。足場が悪いため動力草刈り機は扱いにくく、こればかりの広さであるから畦も含めて手刈りをしている。手間のかかることと思われるかもしれないが、これについてはまた後ほど。
先の蛙、田んぼに数えきれないほどいる小さな生物だが、これらの獲物を求めてか、白鷺がやって来る ことがある。小ぶりなのでコサギだろうか、広げた羽は約1メートルになる。なかなか見かけず、来たと思えば飛び去ってしまう。大勢いつくと田を荒らすこともあるようだが、一羽くらいだと絵になる風景である。
ひと気のない棚田で、蛙のようにへばりついて斜面の草刈りをしていると、ときどき人も訪れてくる。たいていは、観光あるいは散策でぶらぶらしながら、思いもよらぬところに見つけた人に声をかけてくる人たちだ。
きれいな景色ですね、などと話しているうちはいいが、中には米はどれだけとれるのか、田んぼは全部でいくつあるのか、などと質問をしてくる人もいるので予習が必要だ。高速道路から見下ろした眺めにつられて棚田に寄ってみたという遠方の人もたまにいる。棚田オーナーには観光アンバサダーの役目もあるらしい。
しばしの休息をはさんで草刈りに戻る。ところで次の2枚を比べてみよう。
ビフォーアフターですね、と言う人には信じられないかもしれないが、どちらも田植え後の最初の草取りの前のようすである。左は他所の田んぼで、このくらいの伸び方のところが多く、あくまで代表例ということでご容赦願いたい。
要は、草の刈り方で違いが出る、雑草の植生が変わるという話なのだ。
どちらも生える草は同じように見えるが、右側は残されたシロツメクサほかの広葉雑草が畦の端まで覆い、背の高いイネ科の雑草を抑えている。左は広葉雑草が少なく、草の勢いを抑えられずにいる。広葉雑草を残すと雑草の伸びが遅いと気づいたのは、手で刈るようになってからである。
草刈りの間隔 を考えると、おそらく左側はすっかり刈り取った後で一月もせずにまた同じくらいに伸びるだろう。私は、所々に目立つ草が気になってきたらサッサと払いつつ、あとは全面を刈り取るのはやはり一月おきくらいになるが、何とか写真のような状態を維持できている。
私はひそかにこれを 豊かな里山らしい風景 と呼んでいる。
昔の田んぼの畦道はちょうどこんな感じだったという記憶に間違いはないと思うのだ。地面がむき出しになるほど痛々しく刈り込まれた棚田は何とも見るに忍びない。それほどまで刈ることにより、雨で土砂が流出し、土地が変形してしまう。
実際、上の写真のように草が伸びている田は、元々の平らな畦道が端の土が減って極端なカマボコ形になっている。このような畦は刈りすぎで土が減ってしまったものと見られ、低いところに水がたまり、さらに草が伸びやすくなる。
この数年、草刈りの方法を調べるうちに、このような考えによる 「高刈り」 という方法を目にするようになった。検索すればすぐに答えが見つかるが、これについては次回また。(続く)
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