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7月, 2023の投稿を表示しています

棚田の案山子 ― スズメよけに効く方法

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朝の棚田の坂道を歩いていると、突然人の姿が目に入る。一瞬ギョッとするが、子どもたちの作品と気づく。確か小学校で借りている棚田で、毎年賑やかに案山子を立てているのだ。稲の穂が出てくる前にすませておこうというわけだろう。 周囲を見渡すと、そろそろスズメよけを用意する田んぼが見られる。 効果的な鳥よけは? スズメよけは、オーナーそれぞれ好きな形でしているようで、ざっと見て何らか対策をしている田は2割もないか。8月の草刈りの時に合わせて出穂の前に設置するか、穂が揃ってからでもよし。スズメは実り始めた柔らかい米を狙ってやって来る。対策として考えられる方法は、 1. 案山子、鳥よけグッズ、反射板 (CDなども)を吊るす、2. 反射テープ、テグス などを張りめぐらす、3. 防鳥ネット を張る、くらいか。 その効果のほどは、かの本家の主によると、ネット以外は まったく効かない そうで、 下の田 では時期になると一面ネットを張っている。少し割り引いて聞きたいのは、この田は今や周囲に田がほとんどなく、近くのスズメが一斉にやって来ると被害も大きい。この小さな動物にオロオロする年老いた主を見ると不憫な気にさえなる。 一方の棚田は、それほど心配はなさそうだ。スズメは一羽来るとそこに集まる習性があるが、田が多く広いので、地元でもネットを張らないところが結構ある。私も手間をかけず、気休めに光り物を吊るしている。上の中では、カラスの形の鳥よけが効くのか、地元の田でよく見かける。いずれにせよ設置するには、風が強いので 飛ばされないように注意 したい。 実際のところ毎年の収量は、むしろその年の天候や、苗の植え方、どれだけ手を入れるかによる影響が大きく、鳥よけは二の次になってしまう。つまり、ひと粒たりともスズメに食われたくなければ、ほどよい時期に正しいやり方でネットを張るのが最も効果的であるが、そこまでするオーナーはまずいないというわけである。 そういえば、一頃オーナーの「 かかしコンテスト 」が企画され、あちこち案山子で賑わったことがあった。実用よりも、楽しみの一つとして試してみるのが何よりのことだろう。 畦草はその後… すっかり刈り取られて から2週間でこのくらいに伸びている。しばらくは手間のかかる草刈りになりそうだ。 やっかいなイネ科の雑草が勢いを増すと高刈りの...

梅雨明けの暑さ ― 米作りの大切な時期

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朝早くからカンカン照り。背の伸びた稲に隠れる生き物はさぞかし快適なことだろう。稲の陰になって田の草の勢いが弱まるのはありがたいことだ。 小暑 、 大暑 とはよく言ったもので、日に日に暑さが増していく。昨年は6月末から35℃近い日が続き、7月も高温が続いたが、今年は涼しい日もありながら梅雨明けからそれ以上の暑さとなっている。いずれにせよ、米作りにとって気がかりな時期、さらに強まる暑さの中… 暑い夏を乗り切るために 暑さが続く時期、8月には3回めの草刈り。晴天で35℃近くになる日は朝8時にもなれば頭上から日が照りつけ、昼まで仕事をすれば汗びっしょりで干からびるようだ。屋外の活動は控えるよう熱中症注意報が出る暑さの中、いくらか涼しい野山とはいえ、強い日差しの中の作業は何とかしたくなる。 一つの対策に、一斉草刈りの作業に慣れてきたら、暑さを避けて涼しい日や時間にずらしてみたらどうだろう。そもそも都合が合わなければ日を変えざるを得ないのだから。ただし、後で理由をあげるように穂の出る8月は指定日よりも後は望ましくない。また、ひと気のない場所で一人で動力草刈り機を使うのは特に安全に注意したい。 私は夏の盛りは日中でなく、日の出からの数時間に済ますようにしている。朝飯前の一仕事、遠方の方には申し訳ないようだが、もしその立場だったらと考えることもある。 朝早く出て炎天下で作業、日帰り温泉でひと休みにしてもこの時期はやはりしんどい。ならば私は一度、夏の行楽がてら一泊旅行をしてみたい。方々めぐって宿に入り、翌朝薄暗いうちに田んぼへ。日が高くなる前に仕事をすませ、宿に戻って一風呂あびて…  という計画だが、笑われるだろうか。 出穂前後に注意が必要な理由 8月初めに草刈りに行き、田の中を見ると、出始めた穂を見つけるはずだ。 穂が出た稲が全体の4〜5割になると「出穂期(しゅっすいき)」、8〜9割で「穂揃期(ほぞろいき)」と呼ばれる。出穂期は受粉を妨げないよう 田んぼに入らない のはもちろん、前後4週間は 畦草刈りをしない ように言われる。害虫を寄せつけないように配慮し、出穂が8月初旬であれば7月中旬に草刈りを終えることとされる。 ただ、これについて調べてみると、時期がまちまちなのが悩ましい。薬剤のかね合いもあるのか、基本は前後4〜6週間として、出穂期に...

田んぼでひと休みのお茶うけは?

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草取りが続いたので一息入れよう。 この時期に何よりの清涼剤である。梅干しはよく作るが、いつだったか母が作り方を聞きつけてきて、それ以来これもわが家の夏仕事の一つになった。農家のお宅でいただくこともあり、田んぼや畑仕事のお茶うけによく出される一品だ。 作り方は探せばすぐ見つかり、しっかり作ると結構手がかかるが、これは簡単で手間いらずな作り方。 梅の甘露煮   (材料)青梅  500g / 砂糖  200〜300g / 塩  適量 1.洗って水気をとった青梅のヘタをとり、太めの針や竹串などで十数ヶ所穴を空ける。   (細いほど穴が見えなくなるので、竹串などは細くしておく) 2.梅がひたる量(600〜700ml)の水に海水の濃さ(約3%)の塩を入れて溶かす。     梅を入れて1〜2晩おく。アクが出たらとり、梅がぽったりしてきたら水を捨てる。 3.600mlの水に砂糖を入れ、火にかけて溶かしたら梅を入れる。     煮立たせずに、 実がくずれないように 10分ほど煮る。アクをよくとる。 4.冷ましていただく。冷蔵庫に保存で1〜2ヶ月はもつ。 気をつけるところは、煮くずれしないようにすること。味がなじむまで少しおいておいて食べるとちょうどよいかと思う。 「ぽったり」と書いて思い出したが、この地域には昔から親しまれている梅の ぽたぽた漬け というのもある。これは梅干し作りとやや手順を変えて、甘くぽったり漬け込んだもの。さらにそれよりもとろける味を甘露煮は楽しめる。よく冷やしておき、田んぼ仕事の後に口に入れると 疲れがすーっととれる ようだ。 もう一つ、千曲市で忘れてはいけない あんず も食べておこう。 姨捨の棚田だけでなく、一目十万本と言われる森の「あんずの里」も時期にはにぎわう観光地だ。もっとも、たびたび引き合いに出す本家の主に言わせると、 花なんか見てどうする、ありゃ実をつけてナンボ らしい。 ミもフタもない話だが、生産量日本一の森のあんずも限りがあるし、花の時期に霜が降りることもあり、やはり花より実なのである。実際、今年は霜にあい収穫は不調だったという。そんな貴重品を手に入れ、この時期に作るのがこれ。シロップ漬で保存しておくと...

そこはオラの田 ― 田んぼにも境界があるという話

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7月も半ばにはすっかり田んぼの緑が濃くなり、稲の成長が一目で分かる。雑草もこの時期に一番伸びるから、特に除草剤を入れていない田は、畦草刈りよりは田の草取りを優先せざるを得なくなる。草の話ばかり続くが、ここが力の入れどころなので、もうしばらくお付き合いのほど… 草刈りに行って驚いたわけ 年3回の一斉草刈りを終えた田に向かうと少し残念な気持ちになる。緑豊かな里山が一面土色になっているのだ。もっとも、稲はさらに緑に輝き、一段と成長を見せており、何ら問題はないのだろうが、自分の田んぼを見るとさらに落ち込むことがある。 今度こそビフォーアフター、多くの人は、「 きれいに刈ったね 」と言うかもしれないが、 そうではない 。 これを見て私は、言葉も出ずに落胆するほかない。 時々下のオーナーさんが上まで刈り込むことがあるので、「こちらでやりますから」と伝えてはいたものの、今回ここまで刈ってしまったのだろうか。ひどく草が伸びたオーナー田(体験コース)でも、注意されるだけで名月会その他の人が刈ってしまいはしないのだが… 広葉雑草はすっかり消え去り、端にはイネ科の雑草が残され、ブルドーザーが通ったかのように地肌が削られてしまっている。 手間いらずの畦がすっかり荒地に 変わってしまった。元に戻すにはまた長いことかかるだろう。 畦草刈りの範囲 この棚田では上側と下側の畦を 5:5 の割合で刈るようにルールが設けられている。この地区の慣習によるものだそうで、このような暗黙の了解は田んぼにつきもののようだ。 わが家の本家の主によると、田んぼには 石一つにも 隣の田との線引きがあるらしい。水を止めるのに石を使うときも、そっちの石はだめと言われることがあり、これはルールというより掟だわい、と呆気にとられる。おそらく、それが揉めごとを起こさない先人の知恵なのだろう。 畦草も、膝丈まで伸びてきたら人目が気になるが、くるぶしにかかるくらいであれば気にする必要はないし、誰も文句は言わないものだ。さすがに昔気質の農家のように石ころ一つとまでは言わなくても、 手を入れるのは自分の田にとどめ たい。 その他草刈りのヒント 高刈りについては前回でまとめたつもりだったが、いくつか参考になる外部ページを取り上げたので、ぜひお読みいただきたい。「高刈り」で検索するだけで、これ以外にも...

大変な草刈り ― 高刈りのススメ

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(1~2週間もすればこのとおり) きれいに刈った草。でも、 あっという間に伸びて きます。 雑草にもいろいろ種類がありますが、ぐんぐん伸びるのが イネ科の雑草 です。作物に食害を与えるカメムシが好む草でもあります。 高く伸びる草もあれば横に伸びる草もあります。この違いを利用して効果的に草刈りをするために 「高刈り」 という方法があります。 (低い草が増えてくると楽になります)  文字どおり、少し高めに(5~10cmほど残して)刈ると、低く横に伸びる草が残り、刈り残した茎もじゃまになってイネ科の草が抑えられるのです。 そのほかにも… ・草刈機による飛び石もなく安全 ・草刈りの回数と時間が減らせます ・地面も削らずにすみます など、メリットの多いやり方です。 (地面が見えるまで刈ると……) 特に、地面を削るほど刈ると雨により土が流れ出し、大雨で斜面が崩れる原因になります。それを避け、里山の景観維持にもつながります。 残して刈るとすぐに伸びてきそうですが、 低く刈っても高く刈ったときと同じか、それ以上に勢いよく 伸びてきます。手間を減らせる高刈り、おすすめします。 …という内容をアンケートと一緒に農林課に送ったことがある。一つのアイデアの提案であったが、なしのつぶて。草刈りにも土地の管理者の考えがあるのかもしれない。ただ、この頃の棚田を見るにつけ、以前はもう少し控えめな刈り方だったように思えるのだ。 高刈りの効果を上げるには その後、あらためて確信を持ったのは 前回の話 のとおりだが、いくつか注意が必要なことにも気づいた。もちろん草取りなしですむわけでなく、その性質から高刈りは何にでも効く 万能薬ではない ということだ。 つまり、 場所や状況によってはあまり効果のない 場合があるということ。自宅の庭や公園などの草取りであれは、草の根まで残さず取り除くだろうし、高刈りに適した所でも、広葉雑草が少ない状態ではあまり良い結果が期待できない。 このため、試しても効果がなかったという残念なことも考えられる。しかし、広葉雑草の少ない場...

棚田の草刈りと来訪者

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水から上がってくつろぐ蛙。草刈りに来た人間は慣れっこなのか逃げもしない。せっかくだから蕗(ふき)は残して伸びた草を刈っていく。 棚田の草刈りは結構手間がかかる 平地の田んぼだと周囲の畦だけで済むところが、段地になっていると斜面がかなりの広さで、場所によっては3〜4メートルほどの高さの斜面を刈らなければならない。 私のところも一部に高めの急斜面があり、ガレ場のようなところもある。足場が悪いため動力草刈り機は扱いにくく、こればかりの広さであるから畦も含めて手刈りをしている。手間のかかることと思われるかもしれないが、これについてはまた後ほど。 先の蛙、田んぼに数えきれないほどいる小さな生物だが、これらの獲物を求めてか、 白鷺がやって来る ことがある。小ぶりなのでコサギだろうか、広げた羽は約1メートルになる。なかなか見かけず、来たと思えば飛び去ってしまう。大勢いつくと田を荒らすこともあるようだが、一羽くらいだと絵になる風景である。 ひと気のない棚田で、蛙のようにへばりついて斜面の草刈りをしていると、 ときどき人も訪れてくる 。たいていは、観光あるいは散策でぶらぶらしながら、思いもよらぬところに見つけた人に声をかけてくる人たちだ。 きれいな景色ですね、などと話しているうちはいいが、中には米はどれだけとれるのか、田んぼは全部でいくつあるのか、などと質問をしてくる人もいるので予習が必要だ。高速道路から見下ろした眺めにつられて棚田に寄ってみたという遠方の人もたまにいる。棚田オーナーには 観光アンバサダー の役目もあるらしい。 しばしの休息をはさんで草刈りに戻る。ところで次の2枚を比べてみよう。 ビフォーアフターですね、と言う人には信じられないかもしれないが、どちらも田植え後の最初の草取りの前のようすである。左は他所の田んぼで、このくらいの伸び方のところが多く、あくまで代表例ということでご容赦願いたい。 要は、 草の刈り方で違いが出る 、雑草の植生が変わるという話なのだ。 どちらも生える草は同じように見えるが、右側は残されたシロツメクサほかの広葉雑草が畦の端まで覆い、背の高いイネ科の雑草を抑えている。左は広葉雑草が少なく、草の勢いを抑えられずにいる。 広葉雑草を残すと雑草の伸びが遅い と気づいたのは、手で刈るようになってからである。 草刈りの間...