秋の日の風景 ― 四十八枚田を歩く
秋の一日、私は姨捨まで散歩に出かけることがある。往復10kmほどは散歩には少し長いようだが、暑くもなく寒くもないこの時期はとても快適だ。千曲川沿いから八幡の町を抜けると緩やかな坂道が続き、棚田に向かう急坂へ。田んぼが見えてくるあたりの急坂は結構しんどい。
四十八枚田
ふもとの果樹園から収穫を終えた田んぼを上がっていくと、ひときわ小さな棚田に出くわす。文字どおりいくつもの田んぼが連なるこの棚田は、およそ一反の区画が48枚の田に仕切られて耕作が営まれている。これもオーナー田と同じように、地元の保存会の人たちが手をかけて管理されている。
普段何気なく見ている景色の中でも、特に目を引くこの四十八枚田は、遠くからだと小さな棚田がさらに小さく見え、まるでミニチュアの模型を見ているような気になる。目をこらせば田の中の観音様が見えるはず。
田植えに始まりすべてオーナー田から半月遅れで進められ、こちらが脱穀を終える頃に稲刈りとはぜかけが終わる。
細かく仕切られた田は、周囲からざっと数えて40枚。境界のはっきりしない所もあるが区切りよく48枚、小さなものでは そこまでやるか というくらい、わずか半畳の田にも稲が植えられている。
この地が知れわたるきっかけとして広重による 田毎の月 が知られるように、絵師が描いた世界に浸るにはやはり田植えの時期にこの小さな田を訪れるのがよい。歩きながら目をやれば一枚一枚の田毎に月が映ることだろう。
八幡のお宮
もう一つ目に止まる大きな木立にあるのは 武水別神社。創建は第8代天皇の世と伝えられ、壮大な本殿は幕末の嘉永3年(1850年)完成といわれる。約300本の樹木に囲まれた八幡のお宮は、年末年始から節目の行事まで、多くの人が詣でるなじみ深い場所でもある。
冬が訪れ雪が降り出す頃には、大頭祭(新嘗祭)が行われ、今でも多くの人で境内が賑わう。その頃にはすっかり冬支度になるので、秋の穏やかな日を今のうちに楽しんでおこう。
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