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冬に食べたい懐かしい味 (後) ― お醤油豆・野沢菜漬け

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冬の味を楽しむ 野沢菜漬けにお醤油豆、まだ味がなじむには早いがさっそく食卓へ。その出来上がるまでの続きを見ていこう。 写真のお酒は、姨捨にある酒蔵「 長野銘醸 」の棚田シリーズの純米吟醸。古くは姨捨正宗で知られるが、こちらは口当たりのよさに独特のコクがある今の味。もちろん、これらの品々ともとても美味しくいただける。 野沢菜を漬ける (続き) 漬けて一日たった野沢菜。そこそこ水が上がり、何とか漬かったようだ。すっかり水につかるほどではないが、コワいお菜にしてはちょうどよい塩梅になった。多いよりは、少なめがよい。ほどよい塩気で、お菜の風味がしっかりと感じられる。 何日かしたら小袋に分け保存する。すぐ食べてもいいが、美味しいのは寒の頃、飴色に変わり発酵が進み、うっすらチーズのような膜がかかると、ようやく野沢菜漬け本来の味になる。この 酸味が出てくるあたりが一番の食べ頃 である。 塩分がそう多くないので、違う味つけを加えてみるのもいい。好みは、わさびを少々、小さじ一杯ほどの醤油に溶かしてふりかけておく。発酵しすぎて匂いがきつくなっても、これですっきりとする。 お醤油豆の味 お醤油豆も、しばらく日にちがたつと味がまとまり出し、豆の旨味が醤油とほどよく調和して、まろやかさが増してくる。棚田米の最高のおともであり、ご飯にのせるほかにも、 醤油をかけるものであればおよそ何でも 、おひたしや豆腐、長芋を刻んだのに添えてもよいし、玉子かけご飯にも。半熟に煮た玉子をのせてこれをかけると、何とも濃厚な玉子かけご飯ができる。 ところで、この昔ながらの味は、知る人に差し上げるととても懐かしがられる。それもそのはず、昔はこのあたりの多くの家庭で作っていたものなのだ。 材料を提供するのは、この写真の お醤油室(むろ) 。地区の住民が隣組で一緒に味噌や醤油を作っていた場所で、昭和40年代半ばまでよく味噌作りが行われていた。時期になると豆を釜戸で蒸し、それを麹室に入れて、仕上がった豆を1坪はある台の上に広げて味噌を作った。醤油よりは味噌が主で、麹室でできる材料を持ち帰ってお醤油豆を作ったわけだ。 当時はかなりしょっぱい味付けで、結構な量を食べていたのだから、健康に良いはずがない。今回のものは醤油に含まれるのが70g弱、小鉢に一杯およそ 100gあたり塩分が約2g...

冬に食べたい懐かしい味 (前) ― お醤油豆・野沢菜漬け

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この地方に暮らすと、この時期ほしくなる食材がある。今やこれなしでは冬を過ごせないほどの味、それが 野沢菜漬け と お醤油豆 である。 今も多くの人に好まれるこれらの料理は地域の食文化でもあり、長らく受け継がれてきたもの。それぞれ好みがあり、やはりウチのが一番と言いたいのを抑えてもてなしを受けるのも、また郷土食の良さなのだ。 手作り醤油豆 ここ長野、とりわけ北信地方に広く伝わるお醤油豆とは、 黒豆や大豆を発酵させて醤油で漬け込んだ 食品である。四国地方の醤油豆は、地域が異なると食も変わるようで、これとは異なる。 材料の 発酵させた豆と米麹 が必要で、これを求めて松代町の味噌蔵まで行くのがお決まりになっている。材料が入った袋を持ち帰り、まずは 甘酒 を作る。米麹の塊ををほぐして器に入れ、ちょうど浸るくらいに湯冷ましの湯を注ぐ。保温器で6時間もすれば、麹の香りが漂う甘酒ができる。 袋に入った豆は呼吸をして袋に露がついてくるので、頃合いを見て豆を漬物樽に入れ、これもぬるま湯を、豆が湿り気をおびる程度にかけて置いておく。これで豆がよりふっくらと仕上がるのだ。 甘酒の熱がとれたら、最後に材料を混ぜる。販売元の勧めによると、豆と米麹(それぞれ約1kg)に対して、醤油4合、みりん3合とされるが、甘酒だけでかなり甘いこともあり、みりんは使わず、醤油は400ml程度に減らして漬けている。甘酒も多すぎるので、3割ほど減らして残す。 これで塩分が減らせ、それでいて甘すぎることなく醤油のコクがある好みの味になる。甘酒にしても、麦を使う作り方もあり、好みはさまざま。それにしても、甘酒に醤油を混ぜるとは、こうすればうまかろうと思って試したというよりは、たまたま何かやらかして出来たように思えて仕方がない。あとは よく混ぜ、ときどき混ぜながら味をなじませる 。 野沢菜を漬ける 松代まで出かけたついでに、直売所で野沢菜を仕入れてきた。昔のように大家族で近所中にふるまうような食べ方はしないから、1束3kgもあれば十分。しばらく前は、あちこち庭先に樽を出して お菜洗い をするのが見られた。もうそこまでする家庭は少ないようで、わが家も3kgばかりであれば狭い台所ですませている。 持ち帰ったお菜は、日中しばらく外で広げておく。これも以前はどこでも見られた光景である...

年の瀬の手仕事 ― しめ縄を作る

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一年で一番楽しい時期、楽しいときは時間がたつのが早い。せわしい師走に新年を迎える仕事がいくつかある。 この時期、地域行事でしめ縄作りを催していて、なかなか行かずにいたところ、数年前に役員をしたときに作り方を教えてもらった。それを思い出して作ってみる。 手植えで手刈り、お日様をたっぷりあびて 、これほど ありがたい藁 はない。地元の神社から取りに来るほどなのだから、使わない手はない。 手作りしめ縄 必要な 藁 は、脱穀のときに持ち帰ってたっぷりある。今回作る ごぼう であれば、一束でいくつか作るのに十分だ。まずは、すっかり乾いた藁に水をかけ、少なくとも1時間は置いてしんなりさせる。木槌などでよく叩く。 1.用意した藁から汚れの少ないものを選び束にする。太さはさまざまで、 1束を3つに分ける 本数をそれぞれ3、5、7といった決まりのいい数にするとよいという。今回は7本×3の中くらいの太さにした。ざっと20〜30本つかんでもいいと思う。 2.束を分けて、1つずつ 右回りに撚り合わせ ていく。下の端を足で押さえるとよい。湿り気が足りないと角張ってしまうので、再び水で濡らしよくならしてやる。最後に端を洗濯バサミで止めておくと散らからない。 3.撚った2本を今度は 左回り に撚り合わせる。先に撚った分がばらけてくるので、上の写真のようになったところでそれぞれもう一度右回りに締め直してやる。慣れた人だと、この手順を前の手順と一緒に進めていく。 4.最後の一本を先の2本の周囲に巻きつけていく。ギュッギュッと締め直しながら巻く。 でき上がり! 最後にシートの上で転がしてならすか、手の間ですり合わせてやると、滑らかに仕上がる。 正月飾りも面白いもので、長年受け継がれた地域の性格が形になったようなもの。ここ千曲市は、あるいは北信全体に、このごぼうに松と伊勢流の紙垂を添えて2本を1対縦にして飾る。玄関や、おそらく神棚もそんな風にしているところが多いから、全国的に見たらちょっと変わって見えるかもしれない。 最初の写真の御札は地域の神社のもの。これが配られるといよいよ師走。御札は地区の担当が配るのだが、大抵は手渡しでそのまま受けるのに、近くのご丁寧なご婦人、この方だけは差し出した札をきちんと盆で受けるのである。わが家ももっと大切にすれば...